介護福祉士の処遇改善8万円は可能なのか?

こんにちは、年末の忙しさに挫けそうな中の人です。

 

本当は先日参加した相談支援初任者研修の記事を上げたかったのですが、興味深い新聞記事を見かけたので急遽コチラを上げることにしました。

 

追記もあります。そのうち1本化するので期間限定だからと脱線しまくってる記事になりますが

介護福祉士の処遇改善8万円は可能なのか・その2 - 介護とか介護じゃない事とかの独り言ブログ

 

さてさて、皆さんの給料はどれくらいでしょう?介護職員の月給は全産業平均と比較して9~10万円ほど低いと言われております。もちろんこれは平均値ですので地域差等が大きく関係していますが、基本的に同額またはそれ以上の開きはあるでしょう。

これを埋めていこうという国の政策案が出たようですので少しかじってみましょう。

 

 

 

介護福祉士の給料が8万円アップ!?

本当かよ!と言いたくなりますよね、わかります。以前より安倍首相が公約として掲げてきた介護・保育で働く人の処遇改善ですが、ここまで大掛かりなものは初ですもんね。まずはソースをどうぞ、僕はアジシオ派です(目玉焼きの場合)

www.news24.jp

 

ちょっと雑なソースですみません、時間ないのでとりあえず引っかかった記事を使ったので…僕は悪くありません、大したソースも記事も作れない日テレが全部悪いんです。

まずは一旦これまでの処遇改善を振り返りましょう。

 

これまでの処遇改善

 

処遇改善の話になると「貰ってない!」という意見が各所で飛び交いますが、それは後で話すとして(笑)

先に述べておきますが、処遇改善に文句ばかり言う人は少し勉強をお勧めします。現在国が制度として行っている処遇改善というのは、要は麻薬なんです。意味わからない人の方が多いかな…読み終わればわかるでしょう(たぶん)

 

平成24年 処遇改善交付金

 

一人当たり月15000円の処遇改善として全額公費でスタートしましたよね。これが言わば入口なんですね、タバコにしておきましょうそうしましょう。大丈夫です、後で意味がわかります。

公費、つまりは財源が税金なので挙って申請したはずです。また、いろいろと緩かったので余剰があればその分だけ返還すればいいという優しいシステム。入口は甘く優しく、セオリーですね。

この処遇改善交付金から始まる一連の流れには事業所にとって依存じみた側面があります。みんなやってるから自分もやらなきゃいけない、途中でやめると職員が逃げるからやめられない、というジレンマに陥るのですね。

ちなみにこの頃は賃金以外での支給も認められていました、公休増とかですね。

 

平成27年 処遇改善加算・手当

 

一人当たり月27000円の処遇改善を目指し新たにスタートしたのが処遇改善加算・手当です。こちらは利用費同様に公費9割、利用者負担1割となっていますね。また、事業所側にも厳しくなりました。余剰があった場合、なんと全額返還しなければならないんですね。余らせちゃいけないということ。

ヒャッハーーーーーーーーーーー!!!!!

と思った人も多いんじゃないでしょうか?でも現実は甘くないですよね、ブラック企業は幾らでも抜け道を持ちます。誰に幾ら支給したかは最低限だけ守っていればいいんです。これも後述します。

ちなみにこれは脱法ハーブにでもしておきましょう。

 

平成29年 処遇改善手当(パワーアップ)

 

一人当たり37000円の処遇改善を目指しパワーアップしました。それに伴い介護報酬の減額、つまり利用者さんにとってはプラマイゼロ(と思ってもらう)。

大きくは平成27年のものと変わりませんが、算定のための要件は厳しく(というか複雑に)なっています。評価すべきはその要件の中で、経験年数等での具体的な昇給等の条件を明記するルール。あとは特に評価しませんが。

これは大麻にでもしますか。大麻ですよ大麻!だいぶ危険な香りがしてきたでしょう?

 

今回の処遇改善

 

やっとソースに触れますね(笑)

今回の原案では、公費約1000億円を投じて「10年以上勤続している介護福祉士の処遇を大幅に上げる」というもの。もう少し具体的に知りたいところですが情報が少ないので勝手に妄想していきましょう。

 

対象の人数(仮)

 

まず少し計算してみましょうか。

 

1000億÷80000÷12か月=104166.6666…ざっくり104000にしましょう。

単純に10年選手のみを対象とするなら、国の想定する人数は全国で104000人くらい。

介護職員総数195万人(見込み値です、実際こんなにいません多分)

うち介護福祉士は統計値の4割として780000人

介護福祉士780000人のうち10年選手は104000人という試算と考えればいいのかな?

うーん…こんなに少ないかなあ…195万人が悪さしてる気がしますね。まあいいや。

 

上の数字から察するに、財源が足りなくなるので10年までは段階的支給とはならない気がします。9年目までそのまま、10年経ったらドカンと支給される感じ?しかも「平均8万」という言い回しも引っ掛かります。10年目で5万、その後5年を経過するごとに1万ずつ上乗せなんて支給も有り得ます。従事している事業所種別によっても格差ある可能性だってもちろんあります。

あとは10年の算定、これは何とも言えません。同一法人なのか、複数法人でもトータル10年あればいいのか。前者であれば人事異動でのトラブルが想定される(支給対象外への人事異動に応じなくなる等)ので後者になるとは思いますが…こればっかりはお上の考え方次第ですね。

さらにこれは介護職員として従事している人に限られます。つまり現行の処遇改善システム同様、介護事業所に介護業務以外で勤務するケアマネや看護師やってたりすると貰えない率が高いんですね。

そうですよ、マズい事です。

 

介護福祉士処遇改善のメリット

 

いい事は先に済ませましょう。あくまでも介護業界としてのものです、この政策の本質はアベノミクスの歯車でしかないのでしょうけれど、僕は政治評論家ではないのでそちらは割愛します。

以上です、現実とはこんなものです。

あれやこれや言いたがるでしょうけど、可視化できる効果はこの程度。仮に僕が就活中で、10年後に世間に追いつけるよ、介護いいよ!と勧められてもカケラも興味を抱きません。10年も経たないと人並みになれないのかよと考えるでしょう。なので新規に介護職を目指す人数の増加には至らない、現状維持程度にはなるかも知れませんけどね。

 

介護福祉士処遇改善のデメリット

 

大本命でーす(笑)

1分でこれだけ思いつきます。順に行きましょう。

 

介護福祉士の質の低下

 まだ原案なので言いきれませんが、少なからず10年居れば多少の伸びがあると考えていいでしょう。つまりですね、今の時点でも資格取得後に大した勉強をしない介護福祉士が更に学ばなくなる恐れがあるんです。

全員がこんな介護福祉士とは言いませんが、これに該当する介護福祉士が少なくないのが実情ですよ。仕事が忙しくて勉強する暇なんてないとか言いながらモンストはできる、そんな人。

これに関してはせっかく作ったアセッサーやキャリア制度とリンクしてしっかりと支給要件を組む必要があります。

 

②介護関係職で対象外職種の人材不足

 そこのあなた、そうケアマネのあなた。どうでしょう?給料逆転しますよ、しかも大幅に。

あ、介護福祉士持ってるから現場で働く?なるほどですね。

え?看護師からケアマネになったから介護福祉士持ってないし病院ナースになる?なるほど。

 

こうなるとどうなりますか?ケアマネがガチガチで足りなくなるとケースがあふれますよね?そしたら国はどうしますか?

ケアマネの処遇も改善しますか?いいえしません、ケアマネは今後も国家資格にはなり得ないからです。求められる専門性とかは別にして、ケアマネとは本来補助資格です。ソーシャルワーカーが受け持つべき分野ですが何しろ人数が足りない、仕方ないから介護や医療の資格持ってれば受けれる補助資格を作った、それがケアマネ。業務の性格上、事業所内では上級職として認知される事が多いですが決してそんな事はないんです。

ではどうするか?可能性として高いのはケアプラン作成の報酬を増額し、更には自己負担が付くことでしょう。報酬増により事業所ごとに処遇改善を図らせる。今現在自己負担が無いケアプラン作成に負担額を発生させ、家族等がプランを組み負担額ゼロのセルフプランを推進する。我が国の大好きな手法ですよね。

それすらしない可能性ももちろんありますけどね。

 

③いつまで続くかわからないドキドキ感

 こんなドキドキ感いらないんですけどね(笑)

現行の処遇改善すらいつまで続くかわからずドキドキするというのに、この金額が打ち切られる可能性を考えると怖くて夜も眠れませんよね。いつまでこの仕事でメシが食えるのか…この不安というのは相当なストレスであり、介護職員が共通して抱えているものです。不安がない人はめちゃくちゃ評価も処遇も高い所で働いているか、何も考えてないかのどちらかです。

 

ブラック企業の助長

 僕が特に懸念しているのがこちら。自社の痛みで給料上げなくて良くなるじゃないですか。今の給料で何とかでも食いつないでる人が公費で月8万の給料アップ、これブラックはウハウハしますよ。いっぱい増えたんだから昇給しなくていいよねと。なんとか回避する手段を講じてほしいものです。

 

支給方法の問題点

 

さて、だいぶ上の方で述べましたが処遇改善手当には支給に関する問題点が存在します。 以前のブログでも触れていますが、支給方法は事業所の裁量で好きにできるんです。ちょっと例を挙げてみます。

 

例…中の人、Aさん、Bさんが支給対象とします。月の計画値を81000円とします。

  81000÷3=それぞれに27000支給

 

  ホワイトな支給ですね。次はブラックな支給を見てみましょう。

  中の人71000円、AさんBさんそれぞれ5000円、計81000円

 

これが現実ですよ皆さん、処遇改善手当そのものはチョロまかせませんがコレは可能で実際に行われているものです。事業所の中にブラック経営者の親族やら愛人が居たりすると発生します。

 

貰ってない人って本当に居るの?

まあ居なくはないんですが…どちらかというと勘違いが多いです。これは解説します。ブラックについては上で書いてるのと被るので書きませんよ。

本当に貰っていないパターン

 これは2通りあります。

  • そもそも処遇改善加算を算定していない
  • 自分が支給条件を満たしていない

まず前者ですが、処遇改善加算・手当の導入による手間を回避するため算定をしていない事業所というのが少数あります。たまに「貰える人と貰えない人が出て不公平なので、うちの事業所では算定しない」などと大嘘謎の言い訳をする事業所があるみたいですが、本当は面倒なだけです。そんな所で細々と働いてないで転職する事を強くお勧めします。とりあえず本当に手当てが出ていないなら、処遇改善加算を取っているか確認してみて下さい。加算を算定していないのであれば手当は当然出ません。

 

続いて後者ですが、これが意外と多い。処遇改善手当の支給要件は、あくまでも介護職員です。看護師等に多い勘違いなんですが、実際業務が介護だとしてもそれは何の関係もありません。自分がどの職種として勤務しているか、これのみです。ですのでデイ看護師として勤めていて入浴介助や食事介助に入っていたとしても、看護師として勤務している以上は支給対象外です。また、看護師でなく介護職員でも同様の事が言えます。よくデイの手伝いに行くけど自分の所属は介護ではない場合なんかだと支給対象外となります。ただし介護としての勤務時間分、もしくは介護職員と同じ金額で自腹を切って支給している優良事業所だって存在します。あまり褒めないでください、恥ずかしいです。

 

支給されているのに気付いていないパターン

 

あまり居ないとは思いますが…処遇改善に関する支給方法その他については、事業所への掲示等を持って職員に周知するようにと厚労省からのお達しがあります。掲示物ちゃんと見てますかね?見てもないのに個別周知すると勝手に思って、何も聞いてないから出ていないんだろうと判断していませんか?

 

じゃあ平等に全員同額に!

 

という声が聞こえてきそうですが、それは有り得ませんし僕も反対です。簡単ですね、介護職員の質の低下に直結するからです。

 

ホワイトとかブラックとかは置いといて、雇用側としては熱心に仕事をして実績を挙げた人に手厚い報酬を与えたいというのは当然です。ただ在籍しているだけで高い報酬を求めるというのは愚の骨頂、それを得るためには本人の努力が必要なわけです。このような自堕落な考え方をする人はどの業種にも存在するのですが、こと介護業界においてはエンカウント率が倍になります。倍で済むか怪しいですが…とりあえず脱線しそうなのでブラック職員については別記事を作成します、これ以上は言及しません。

 

そんなんで実現するの?

 

ここまで挙げたデメリットを踏まえてもなお、やり方次第では有意義な政策であると言えますのでこれは実現するでしょう。そしてこの政策こそが大麻を超える覚醒剤レベルの存在となります。ここまでで危ないモノが出揃いましたので、まとめて行きましょう。

 

戦慄、処遇改善の恐怖

 

ちょっと盛りすぎたかもしれない(笑)

まずは整理しますね。事業所を毒に慣らすため、国はまずタバコ(処遇改善交付金)をバラ撒きました。みんなやってるよ、大丈夫だよと。ここで事業所は依存性(導入するしかない、導入したらやめられないジレンマ)を持ちます。

 

次に国はタバコを撒くのをやめ、脱法ハーブ(処遇改善加算・手当)を撒き始めます。既に依存を憶えた事業所はこれに手を出すしかなく、続けて同じ理由で大麻(処遇改善パワーアップ)に移行します。

 

ここまで来ると事業所はもう依存度MAXです。ここからは僕が政治家ならという視点でお送りします。

もはや依存の沼から抜け出せなくなった事業所に、僕(国)は最後の果実を与えます、覚醒剤(介護福祉士処遇改善)をチラつかせるんですね。元野球選手とか元芸能人とか、その恐ろしさは皆さんご存知の通りです。どこも申請するしかないんです、平均月8万にも上る処遇向上の可能性があるものをスルーした日にはベテラン全員から辞表を叩きつけられます。そりゃそうでしょう、残ってても貰えないなら今後貰える見込みのある事業所に移っちゃいますもの。かくして対象事業所のほぼ100%がこの処遇改善に申請し、究極の依存が始まります。

 

さて、数年を経過すると一つ問題が浮上します。こんなもの導入したら介護の離職率が下がる、つまりどんどん10年選手が増えるわけです。

 

財源が無いぞ。

 

財源を新たに創設できるアテもない、だったら何かを削るしかない。でもこれをやめたらベテランが居なくなる、何なら日本なのに暴動が起きても不思議じゃない。

 

そうだ、元々の処遇改善加算・手当をやめる時だ(キリッ

 

これまでアベノミクスによって企業、特に大企業は体力を付けていて然りです。追随できない企業は淘汰されるだけです。日本は民主主義国家ですが、社会的には資本主義となりますので弱者の淘汰は必然ですね。という乱暴な理由で処遇改善加算・手当を廃止、加算分より少しだけ低い金額を利用料に上乗せし、利用者さん側にはトータルで引き下げを謳います。そして事業所、多少の売上減少となるもののこれまで処遇改善手当として支給してきた分の維持程度はできるはず。頑張ってねーと丸投げします。

 

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 迷路の悪魔が言っている通りです、事業所にとってここが行き止まり。いくら指導しても職員の処遇を上げなかっただろ?でも制度に強制されたら出来ただろ?出来てたんなら続けろよ、やめたら人が抜けるし来ないんだぜ?という悪魔の囁きで事業所を追い込みます。弱者(選ばれない≒魅力等が無い事業所)は淘汰され、強者(職員にも利用者にも選ばれる優良事業所)が利を得るシステムの完成です。

 

とまあ妄想タイムは終了します。企業努力での処遇改善に「強制的に慣れさせる」、仮にこのシナリオ通りなら介護職員処遇改善交付金から始まったこの一連の制度は歴史に残る政策となるでしょうね。実際はそこまで考えてないかもですが(笑)

 

まとめるよ!

 

今回の原案はほぼそのまま通ることになると思います。その思惑は僕たち介護職員の理想とは違うかもしれない、でも結果的に同じような所に着地する のなら誰も文句は言わないでしょう。

既に10年選手のあなた!どうですか?いきなり8万とは行かないまでも5万ほど月収が増えたらどうでしょう?頑張って耐えてきて良かったなってなりません?まだ介護を諦める時期ではありませんよね!

これを原動力にもっと情熱的に介護と向き合う介護福祉士が増えるのであれば、僕は素晴らしい事だと思います。金の話は汚いと思われがちですが、それが無ければ何もできないのも事実。頑張る理由は人それぞれですもんね。

 

どちらかと言うと、最後の最後に踏ん張らなきゃいけないのは事業所そのもの。ぜひ惜しまず努力して欲しいものです。

 

で、お知らせです。厚労省介護保険最新情報(Vol.612)が発信されております。こういっためんどくさい複雑なものには触れたくないので各自で確認・理解をしておく事をお勧めします。間違って「解説せーや!」という声があれば頑張りますが…今週中は詰まってるので無理です(笑)ではまた!