福祉用具上限価格制開始!予想を裏切ってダメじゃんこれ!

長らくの放置から帰還しました、介護の中の人です。

 

放置って言っちゃダメですね…一応お仕事に忙殺されて更新できなかったので…ともかく無事に再開できる事になりました、ひゃっほい。

 

さて、ここ数ヶ月に渡って僕から貴重な「時間」を奪いまくった福祉用具貸与の上限価格制開始についてぶつぶつ文句を書いていきたいと思います。いつもであれば制度もアレだけどもっとアレなのは事業所などと言っている僕ですが、今回は制度へのダメ出しとなります。例によって自治体その他で対応は違ってくる部分がありますので、大事な部分は記事を鵜呑みにせず都道府県各部署への問い合わせをお願いしますね。

H30.10福祉用具貸与上限価格制開始

ついに始まりました。こちらの上限価格制の案が出た時、僕は珍しく褒めまくっていたと記憶しています。おそらく改正の記事で触れていたと思いますが、これ素晴らしいじゃないですか。福祉用具って暴利屋の巣窟みたいな部分があったので、この制度が始まれば利用者さんは適正な価格で福祉用具をレンタルできるようになると思ってました。思ってました。蓋を開けてみれば何も協議された形跡の無い手抜き制度今一つ惜しい内容でしたが。とりあえず今回の上限価格制の要点は、

  • 全国平均貸与額の公開
  • 貸与上限価格の設定
  • 上記に伴った用具選定時の小変更

が挙げられます。それぞれ見てみましょう。

全国平均貸与額の公開

月の利用実績100件以上のものを対象に、全国平均貸与額を公開しております。また、この平均額は我々が利用者さんに商品提案を行う際に説明をする必要があります。

メリットとして、利用者さんがレンタルする(もしくは既にレンタルしている)用具の価格が高いのか安いのかの判断材料となります。今まで車いすを600円で借りていたけど、これって高いのか安いのかわからないといった方も居たことでしょう。

ところが、です。このメリットは同時にデメリットともなり得ます。田舎の小さな事業所など、利用総数がさほど大きくないけれど福祉用具貸与は継続しなければならないような所で事件は起きるんですね。

中の人「この車いすが500単位になりますね」

新規さん「この全国平均だと300単位になってるけど?」

中の人「すみません、うちは仕入れの関係で500からは下げられないんです」

新規さん「そう言って儲けてんだろ?税金事業はいいもんだな

中の人「あべし」

こんな会話が繰り広げられる可能性が無いと誰が言えるのでしょうか…ほんともうこれだけが怖いです。平和に済ませられるよう、回避策を練っておく必要がありますね。

貸与上限価格の設定

これはまあ骨子としては素晴らしいんですが、やっぱり投げてる感がすごいんですよね…途中でめんどくさくなったんだろうなと思うレベル。

メリットは当然、荒稼ぎしたがる悪徳事業所の抑止力となり得るかなといった所。これも提案時に説明しなければなりませんので、利用者さんは全国平均・上限価格・貸与価格の3つの情報を得る事ができます。

デメリットっていうのは無いんですが、まあせっかくなんで文句でも書いてみます。前述の全国平均額とこちらの上限価格は月の利用実績100件以上福祉用具を対象としているとの事です。その対象数は驚きの2,807商品!少なっ!なぜこうも詰め切れないのか…アス〇ルとか見習えと思ってしまいますが。

これねえ、抜け道を用意してあげてるようなものなんです。古くてもうどこも使ってないような福祉用具なんか補修して貸し出しちゃえば対象外じゃないですか。マットレスとかはカバーの関係で出来ないでしょうけど、車いすとか歩行器なんかできちゃうじゃない。車いすのフレームが溶接個所から裂けるの見た事ありません?あれは溶接が不適切だから溶接そのものによって強度が落ちて起こる現象なんです。そんな程度の商品ならいくらでもリサイクルできちゃうでしょうに何を考えてるんだか。ちなみにうちでレンタルしてる物の中にも数点ありましたよ、対象外。本気で探せば幾らでも出てきそうなもんですねえ。

上記に伴った用具選定時の小変更

めんどくさい言葉で書きたくなったからこのような字面ですが、要するにまた増えるんです。紙が。世の男性は髪が不足して途方に暮れているのに介護保険は紙の無駄遣いをやめるどころかどんどん助長します。ほんと全力でエコの取り組みに逆走する業界です。

ふくせんの様式を例にしますが、これまで福祉用具貸与時には利用者基本情報、福祉用具サービス計画書の2つの書類を作成していました。これを作れという割に更新期間は明示されておりません、ブレる事の無い介護保険クオリティ。今回はそこに、選定提案なるものが追加されました。それがコチラ。

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TAIS記入欄があるから一覧表からデータ引っ張りやすいと思ったのもつかの間、やつらから届いた一覧表(TAIS、平均価格、上限価格等)から引っ張ると商品名が長くて何かわからなかったり、マットレスが91幅も83幅も同TAISなのに一覧には91幅と書かれているからいちいち訂正しなければいけなかったりとめちゃくちゃ。上がサボれば下が地獄見るのはどの分野においても同一であります。まあどのみち一覧表は無駄な情報量なので自分でリストは作りましたが、更新めんどくさいなあ。

あともうひとつ、地域ごとに違いあるはずですが一応書いておきます。先日この説明会なるもの(主催等は伏せますが)に参加したんですが、そのなかで紹介されていた事です。この提案時なのですが、ふくせんや他の説明において「機能や価格の異なる商品の提案」となっていますよね?ところがこの説明会で言われたのは、「同一の機能で価格の異なるものを提案・記載してください」というもの。さすがに質問しましたが、やはり回答は同じでした。

あまりにも呆れてしまうのですが、メーカーが違うだけで全く同一の機能の福祉用具を違う単位で貸し出しているおバカはいるんでしょうか?もしくはそれが普通だと思うほど主催はおバカなんでしょうか?提案する、選択して頂くというのはそういった意味なのでしょうか?この件は疑問符が増える一方なのですが、もはや会話をする気にもならなかったのでそれ以上はツッコみませんでした。

ちょこちょこ出てくる問題点

期待を裏切らず問題点がてんこ盛りです。シャッター閉める事業所は必ず出てきます。

適用範囲

これは気になりますよね、書類の適用範囲です。H30.10以降の新規からなのか、それ以前から利用されている方にも説明が必要なのか。県に問い合わせた結果が以下になります。

県庁「貸与価格が適正かどうか利用者が判断できるようにという書類になりますので、既存の利用者についても説明と説明を受け同意したという文書が必要になります」

これです、この作業が僕からブログを書くという時間すら奪い去った元凶。いくら小さい事業所とは言え利用人数はそれなりなんです。うちしかやってないもの。その全員だそうです、その瞬間、今年の僕に秋は無いなと悟りました。ただでもこの時期は子供の行事やら町内のアレとかコレで忙しいというのに…。

ちなみにこれを読んで「えっ!やばい作らないと!」とはならないでください。いつも言いますが、このあたりの判断は都道府県に必ず問い合わせてください。うちが必要と言われただけで、他県も必要という事ではありません。既存に関しては計画書更新の際で大丈夫ですよ、と言ってくれる非常に有能な所も必ずあるはずです。

福祉用具貸与価格の不必要な低下

これ当然なんですが、なんなら毎年下がる勢いです。上限価格については「全国平均貸与価格+1標準偏差」で計算され、正規分布の場合、高い値段をつけた上位約16%がうんたらかんたら…」だそうです。要するになんとなく決めた向こう基準の計算はあったのでしょう。新商品に関しては3か月おきに追加、既存商品については毎年見直しだそうです。

えっ?

これ毎年見直すとか狂気としか思えない。当社の例で紹介します。

〇〇社の純金製車いすの上限価格が1000円だった。当社では1200円で貸与していたので、これは貸与価格を見直さなければならない。会社を経営していれば当然、最低限の利益率というのを考える、当社の限界は900円という結論に至った。ところがこの純金製車いすは大変人気で貸与実績が多く、いきなり900円にしては収益が危ない。だが1000円ちょうどにすると来年また上限価格が下がり、その際の上限価格が1000円を切っていれば説明をして回らなければいけない。仕方がない、多少の痛み(損失)は耐えなければいけないようなので950円に変更しよう。そして1年後…

厚労省今年の上限価格は949単位やで

これ。本気で怖いですこれ。こんなんなったらすぐ事業所閉めるかもしれない。こんなのが3年もすれば劇的な貸与価格になってますよねきっと。そうなったらもう大手でなんとか頑張ってください、さすがに頑張れません(気持ちが)。

福祉用具貸与サービス全体の質の低下

 業界内ではこれを懸念する声が最大かもしれません。これまでも福祉用具貸与事業というのは、常識的な範囲で価格設定をしてホワイトに運営している事業所の場合まず採算が合わない事業でした。福祉用具専属で正規社員を置き、その社員たちを有益な研修等へ積極的に参加させ、ケアプランに沿って利用者さんの残存能力をできる限り活かした福祉用具を選定し、それらのモニタリングを実施する。その労力に見合った給与を出すとなると、まあ利益は薄いです。当地域クラスの田舎であれば、併設事業があるなら福祉用具のスタッフというのは中心者を除き(専門性を若干犠牲にしてでも)兼務で済ませたいレベルなのです。

そこに来て今回の収益減、業務負担量は無駄に増える状況。多少でもブラック寄りの事業所が考える事は知れています。適切ではない利益率優先の用具提案、スタッフの研修等の減少、結果として更に用具の選定が適切でなくなるといったところでしょうか。このあたりは完全に事業所の努力が求められるのですが、その努力をする事業所ばかりなら最初からこんな上限価格制なんてならないという。いやはや。

チェックの目的喪失

これ正確には上と同じく質の低下に含まれるものです。業務量が限界になってくると、人間は良くない方向に頭が回るようになります。例としては、訪問してモニタリングやらする時間がないという理由で書類を偽造し始めます。チェックした記録があれば実地指導はセーフ程度の考えですね。いやそれセーフじゃないんですけどね。立派なアウト。

これは間違いなく増加するんじゃないかなと思っています。これまで真面目に取り組んできた事業所もこんなの始める可能性が多分にありますよね。中の人個人としては、この状況はある程度制度が悪さしていると思います。もちろんそんなことをする事業所が一番の悪ではあるのですが、そもそも紙仕事を無駄に増やす制度というのも原因の一端。介護事業に広く関わっていればわかる通り、「必須である」と感じる書類のなんと少ない事か。記載についても良く分からない理想論でへんてこなサービス計画書を作成させ(主に居宅、障害分野もですね)、全く現実味が無い。文章の響き的な恰好ばかりを気にして作成するケアプランの何が「専門性」なのか、何が「質の高いプラン」なのか。これは海よりも深く反省するべきであって…ん?その話ではない?失礼しました。

ともかく、チェックというものの本質が怪しくなってくるんです。モニタリングであれば各用具の不具合がないか、快適に使用できているか確認するのが本来のチェック。ところがここで問題にしているのはチェックボックスにチェックをする事が目的になりかねないという事なんです。

今後について

前述の通り新商品は3か月おきに追加、既存商品は年1回見直しというのが基本姿勢のようです。また、一度掲載された商品はその後に平均貸与数が100を割っても削除はしないとの事。よほど魅力のある商品でなければ新商品導入はこの年1回の更新時まで採用したくないなぁ…というのが中の人の正直な意見。こういった事務作業をちまちまやりたくない(まとめてもやりたくありませんが)もので、どうしてもそういった穿った考えに落ちてしまいますね。というより、そもそも僕自身が福祉用具貸与の中心者ではないですし…単位絡むからやっただけで…もうやりたく(ゴニョゴニョ

気を付けたいのはこれら業務増によって今後はこれまで以上に実地が危なくなってくる事も容易に予想ができますし、なんなら各解釈を正しく読み取っておらず真面目にやってきたのに指導対象となる危険も十分にあります。業務がきつくなるのは目先だけではないという事です、早めに情報収集をして適切なサービス提供と書類管理をする必要がありますね。

 

ところで、こういった紙媒体に関して介護保険側でもっと真剣に考えて下さいまじで。増やしすぎ、保存期間も基準では2年ですが結局は5年保管。もうね、物置がいっぱいなんですよね。おまけに個人情報の塊なので燃えるゴミにただ突っ込むわけにはいきません。はっきり言って事業所の努力だけでは厳しい部分もありますので、はやく電子カルテ導入の補助費をよこせ事業所の努力を後押しする何らかの手を講じるべき時期かもしれませんね。それ会社だけでやるとみんなのボーナスがひどい事になるからできないんで。なにとぞです。