介護事業所を立ち上げよう!

あけましておめでとうございます、介護の中の人です。

 

1ヶ月遅れの挨拶もどうかと思いますが。仕事以外の事も忙しくてなかなか書けませんでしたごめんなさい。

 

さて、今回は介護事業所立ち上げについて。以前のブログで介護事業所の経営の甘さをたびたび指摘していますが、そこをクリアできるのであればぜひ立ち上げて頂きたいものです。

 

お金を用意しよう!

いきなり現実です。これ本当に大事ですからね、思い付きで事業を始めて資金が回らず、廃業する事業所の多い事…情けない限りです。そのうち儲かるとでも思っているのでしょう、そのうちなんて言ってる時点で黒字事業にはできないんですがね。

会社を設立するにあたり必要になってくる資本金。昔は株式会社を持つのに資本が1000万必要だとか敷居が高いものだったようですが、現在は大幅に緩和されており資本など1円でもOKになっています。だからって資本1円はあり得ませんが(笑)

日本では資本金の規模を会社の信用として捉える風習があります。本来会社の価値というのは資本金の規模ではないのですが、あまりにも少なければやはり信用してもらえないのも事実。これは利用者の増減だけでなく求人応募の増減にも関わってきます。

さらに、介護保険事業における収入の多くは介護報酬となります。仮に1/1~1/31の介護事業での売上が100万円あったとしましょう。請求~入金のフローにもよりますが、利用者負担を翌月請求としても2月に回収となるのは利用者負担の1割、10万円。国保連請求分の9割分の90万円は2月に申請して、入金処理になるのは3月という事になります。つまり今月の売上を回収できるのは再来月という事。お花畑経営者はこれを考慮しておりません。

現金基準での考え方でちょっと例を挙げてみましょう。ちなみに法人設立費用については後述となりますので、ここでは計上しません。

1月

自身を含む3名で1月に訪問介護事業所を立ち上げたとします。軌道に乗るまでは支出を抑えたいもの、念願のシャッチョサンになったけど自分はみんなと同じでいいやとして、3人トータルの月の人件費(役員は厳密には人件費ではないが)が65万円。田舎だけど大通りに事務所を借りたよ、9万円。水道光熱費や通信費が3万円かかったよ。税理士に1万円、掛けのガソリン代が2万円、今月は売り上げが30万円だった。備品などで20万円かかったなあ。現金基準で行きますので、1月の支払額は備品購入の20万円。つまり1月は-20万円となりますね。

2月

費用は1月と同じだよ。売り上げは40万円だった。1月分利用者さんに請求し、全額回収したよ。備品等で2万円使ったよ。

1月分利用者請求を回収=30万×0.1=3万

1月人件費65万+事務所費9万+水道光熱費3万+税理士1万+ガソリン2万=80万

回収分3万-1月分経費80万-2月備品2万=-79万

3月

費用は変わらず、売上は50万だった。2月分を利用者さんに請求し、全額回収した。2月に申請した1月分国保連請求は問題がなく、全額入金になった。備品の購入は無かったよ。

1月分国保連請求が入金30万×0.9=27万

2月分利用者請求を回収40万×0.1=4万

2月人件費65万+事務所費9万+水道光熱費3万+税理士1万+ガソリン2万=80万

回収分27万+4万-2月分経費80万=-49万

えっ…

初月30万、そこから月10万ずつと、小規模開設では悪くない伸ばし方になるんでしょうか?とはいえまともな収入が入ってきた3月ですら-49万円、3連月のトータルでは-148万円となっていますね。仮にこのペースで伸ばしていったとして、月あたり10万円ずつ売上が伸びたとしたら単月黒字となるのはおよそ9月あたりでしょうか。単月現金黒字というだけですので、それまでのトータルだと-250万ほどになるでしょう。そのころの売上って110万か…社員3人じゃフットワーク悪いですしパートさんも入ってるでしょう、それなら人件費も上がってますね。

上記の例で言いたいことは2つあります。一つは費用をナメてはいけないという事、こと新規開設にあたってはいかに費用を抑えるかというのは極めて重要なものです。もともと知ってる人に来てもらったから安い給料は…とか、国道沿いの目立つ場所に事務所を…とか甘えてるとこういった目に遭いますね。

もう一つ、単月黒字見込みの9月頃でトータル-250万と書きましたが、この例の会社においては最低250万、できれば350万の資本金が必要と考えましょう。赤字期間は資本金からしか費用を捻出できませんからね。ちなみに銀行から創業融資を受けるという手段もありますが、これはお勧めしません。借金は資本に計上できず、つまり単純な負債扱いとなって終了です。パチンコなんかと同じで完全に負けスタートですからやめておきましょう。僕は投資家ではなく経営者の目線しか知りませんから、介護事業における負けスタートは論外と考えております。 

法人格を取得しよう!

お金の目処が立ったら会社を作ります、介護事業の申請云々の前に法人格を取得する必要がありますよね。介護事業所というのは株式会社〇〇の訪問介護△△、もしくは合同会社〇〇の◇◇デイサービスという形となりますが、この株式会社〇〇や合同会社◇◇の部分が法人格となります。要は会社そのもののコトですね。小規模の法人格取得に際し社会福祉法人や医療法人は現実的ではありませんので、株式会社・合同会社NPO法人が主になってきます。合資会社や合名会社というのもありますが、あまりおすすめの形態ではないので省略させて頂きます。

 

で、上記3種の中から選ぶわけですが…この選択は慎重にして頂きたいです。それぞれにメリットやデメリットがあるのはもちろんですが、廃業率の増加を見る限りデメリットの影響は今後他産業の比ではなくなってくるでしょう。ここではその法人格ごとのメリットやデメリットについて紹介します。介護事業所開設に直結するものだけ挙げていきますので、もっと詳しく知りたい方は専門家のブログでどうぞ(笑)

株式会社

他と比べて周囲に安心感を持ってもらいやすいのが最大の特徴でしょうか。規制緩和により非常に取得しやすくなっております。反面その取得のしやすさから、安易な設立・経営により廃業する会社も増加しております。これは介護事業に限った事ではありませんけどね。

株式会社というのは営利法人ですので、当然利益の追求が求められます。より質の高いサービスを提供し、利益を上げ、更に上のサービスを目指す。ところが現実は、毎年同じような事を繰り返しているだけといったケースの方が多いです。これは将来的には淘汰されていく(維持は低下と同義)のですから、危機感を持つべき事案なのですが。

カネに汚くなる必要はありませんが、真剣にカネと向き合える方でないと厳しいような気がしますね。

メリット

他の2つに比べ信用を得やすい。また、他事業にも手を出しやすい。

株主=社長であれば、そこはあなたのお城。

利益配分は出資額に比例するため、平和な世界。

株式公開ができる(場合によりデメリット)

デメリット

設立費用が高く、25万~くらい。30万あれば安全。

決算公告義務があるため、ランニングコストも高い。

株主総会の開催が義務であるため、それらの手間と費用も考慮が必要。

役員の任期が10年と定めあり(場合によりメリット)

合同会社

何よりの強みはお金がかからないという点。介護事業では合同会社って珍しくないんですが、理由はこの一点に尽きます。また、登記時の書類も少ないため作業も楽。ゼロからのスタートには一番適しているかもしれません。

ですがデメリットも小さくありません。やはり法人としての格とでも言いましょうか、聞きなれないし怪しいしで信用を得にくいのが現実です。逆の話をしますと、社協や社福なんかはどんなに不正で有名になろうと利用者減が大きくないですよね?株式会社なんかは盛大なダメージを受けますし、合同会社ならさらに倍くらいダメージあるかと思います。また、利用者確保はまだいい方ですが従業員の確保が難しい。パートならともかく優秀な正社員が欲しいといった時に、求人票の時点でスルーされる恐れが非常に高いです。

ですがご安心を、合同会社から株式会社に変更する事もできます。とりあえず事業を始めて、軌道に乗ってきたら株式会社に変更というのも重要な一手。ちなみに10万円程度です、高いと見るか安いと見るかは経営者次第ですね。

メリット

設立費用が安い。6万円程度。

決算公告義務が無い。

役員の任期が無い。

デメリット

怪しい

他法人と比較し、ネームバリューが低い。

利益配分が自由(トラブルの要因)。

NPO法人

数は多くありませんが、介護事業所の中にはNPO法人ももちろんあります。よく勘違いされるのですが、非営利というのは儲けてはいけないわけではありません。儲ける事が主体の事業はできませんし、その利益を配当できないだけの事です。介護事業は営利事業として行う事が出来ます、定款や運営規定にしっかりと盛り込めば給与や賞与その他についても営利法人同様に出すことができます。また、これも勘違いされやすいのですが営利事業を行う以上は法人税の対象です。

最大のメリットは設立費用がほぼかからない点、次いで地域の評価が得やすいといったものが挙げられます。どちらも介護事業との相性は抜群です。

ですがそれらを帳消しにするだけのデメリットも当然あります。透明性が求められるNPO法人ですので、設立はもちろんのこと決算等の書類の煩雑さは群を抜いています。さらに会計処理がやや特殊なため、本当に手間がかかります。事業そのものよりもこうした法的に求められる書類等に割くエネルギーが多すぎるため、個人的にはお勧めしません。

メリット

設立資金がほぼかからない。

法人格の社会的評価が高い。

デメリット

恐ろしいほどの書類作業に追われる。

違う事業にも手を出したくなった場合、制限がある。

求職者からは薄給のイメージを持たれている。

総会の開催も手間がかかる場合が多い。

役員の制限がシビア。

有効に利用できる補助・助成は減少の一途。

介護事業の申請をしよう!

法人を設立したら介護事業の申請準備をしましょう。難しく考える事はありません、指定申請はよほどの事が無ければ通らないという事はないんです。サービスごとの細かい部分は個別記事に譲るとして、ここでは大まかな申請の流れについて紹介します。もちろん自力申請をしましょう。お金を払ってまでやってもらうような書類はありません。

市町村に相談

これは申請に必要な事業計画等を作成してからの方がいいのですが、当県のサイトでは最初のフローとなっているので一応その通りに書いていきます。各市町村にある介護保険課(地域によって微差ありますが)へ出向き、担当者と協議をします。事業開始の理由、自身の経験値、利用見込み職員配置や採用の目処、この程度は詰めてから行くようにしましょう。ここでの協議内容を様式に記入し、申請時に提出する必要があります。

申請様式の記入

サービスによって必要な書類が違う場合がありますが、大したものではありません。気を付けてほしいものだけ紹介します。

勤務形態一覧表

常勤換算の理解が足りなければこれに泣かされるでしょう。訪問入浴は不要、福祉用具は2.0とわかりやすいのでいいのですが、訪問介護やデイサービスなんかは煩雑なこと間違いなしです。こちらでは管理者兼務の場合、管理者0.1、常勤0.9で振るのですが県によって扱いが違う場合があるかもしれません、不明な場合は問い合わせましょう。また、管理者は1職種のみ兼務できるのですが勘違いをしないようにしましょう。

管理者を1職種として、さらに1職種ならOKという意味です。

これには実際の業務量等は一切考慮されません。すごくヒマな訪問介護と更にヒマな訪問入浴の兼務であっても、管理者が付いている人はアウトです。

事業計画書

会社で作成する数字バンバンな事業計画書とは別物です。アンケート程度の記入内容(失礼)ですので難しくはないと思いますが、そのぶん油断しやすいので記入漏れ等に十分注意してください。

運営規定・契約書・重説

テンプレはネットにありますが、穴埋めをするだけでは無く必ず理解しながら作成するようにしましょう。不足等あって有事に泣きを見る事になってしまいます。

契約書と重説は別物です。同一のものにしたければ必ず重説に契約書の内容も盛り込み、尚且つ契約書も兼ねる旨の一文を加えましょう。逆はダメです、基本的にこの二者は「重要事項を説明した上での契約」という関係になっておりますので矛盾が生じます。スルーしてくれる自治体もあるかもしれませんが、できるだけ安全な橋を渡りましょう。

設備・備品

共通して注意しなければいけないものは相談室の確保と手指洗浄等の設備です。相談室は一般に業務を行う部屋と区別されなければいけません。パーテーションで区切る等でも大丈夫ですが、常にその状態で置いておける程度の事務所面積は必要という事になります。

手指洗浄等の設備は落とし穴。ハンドソープ、アルコール、紙コップ、イソジン、ペーパータオルの常備が望ましいです。紙コップとペーパータオルは使いまわしによる感染防止の観点からですね。

写真を撮る際は全体がわかるように。うるさい人はうるさいです(笑)

いざ申請!

ここまでの書類をそろえたら県庁の担当部署へ書類を提出します。事前に連絡し、訪問日時を決めてから行きましょう。担当者がその場で軽く書類に目を通しますが、本格的なチェックではないので大した時間はかかりません。

初回の申請では理解したつもりでも小さな間違いがつきもの。数日中に訂正箇所の連絡がありますので、指示通りに訂正して再度提出します。これはFAX等で十分です。

これらの書類が完璧になればもう申請は終了となります。指定が下りた旨の通知が届きますので、しっかりと保管しましょう。

さいごに

法人設立については(詳しく書いてませんが)登記書類に悩まされる場合もありますが、指定申請はこう見ると大した作業ではないような気がしてきませんか?申請をあまり知らない人に聞いたりネットの情報を鵜呑みにすると大変な作業に感じますが、いざやってみるとそんなことはないです。書類だけなら1週間、長くても2週間もあれば余裕で作成できるかと思います。

なぜこんな記事を書いたのかですが…大企業の介護事業を全否定するわけではありませんが、あまりに肥大化すると目が届かなくなるものです。僕個人としては、教育の追いつかない大きな会社よりも優良な小規模事業所が数件ある方が今後の介護事業の市場を活発にすると思っています。ですので理想ある介護人にもっともっと起業して頂きたいんですよね。

ちなみに教育といえば何年も前に社福がとんでもない事を言っていました。規制緩和により民間が介護事業に参入してきたのが原因で、介護の質が低下したと言うんですね。笑うしかない。自分たちは未だに措置時代のままの化石介護をしておいて何を言うのか、そもそも民間介護事業者とはいえ中核に居るのは規制時代に自分たちが育てた介護人ではないのか。人のせい、会社のせい、国のせいにしたがる介護人が多いのは自分たちの罪であると認識するべき。ゆとり世代を作った世代こそ本当のゆとり世代の原理ですね。

しまった、あと一歩の所で脱線した(笑)

それではまた。