平成30年度介護報酬改定…0.5%ほど増加?

仕事以上に雪かきのせいでホットなニュースが書けない、介護の中の人です。

 

貴重な一日の中で2時間強も雪かきに奪われるのはさすがにキツいですね。でも朝の雪かきは嫌いじゃないです、早い時間に適度に身体を動かすと頭が冴えますもんね!冴えても大した頭ではないんですが(笑)

 

さあ、介護報酬改定がじわじわと近づいてきました。前回は大幅な報酬減となりましたが、なにやら微増の動きを見せているようです。

 

介護報酬0.5%程度プラスの動き

いきなり本題です。時期的にほぼ確定な気がします、あとは細かい調整でしょう。まずはソースをどうぞ、ちなみに僕はタルタル派です(エビフライの場合)

 

www.asahi.com

 

0.5%前半という事ですが、このあたりが微調整の範囲かと。微調整とは言っていますが0.01%でも単純計算で2億7000万くらいの金額となりますので、慎重にならざるを得ないのは当然ですね。

 

そもそも介護報酬の改定とは?

介護報酬は3年ごとに報酬が見直されることになっております。介護保険負担額や介護事業所の状況等を勘案して改定が行われます。ここ最近では介護事業所の状況という部分が大きなウエイトを占めており、介護事業所が儲かりすぎと判断されれば減額、赤字すぎと判断されれば増額と考えて結構かと思います。

前回の改定

ソースにもあるように前回の改定は平成27年度、2.27%のマイナス改定となりました。介護保険始まって以来のマイナス改定であり、これまでさんざん放置されてきた大きく改定の無かった訪問入浴でさえも対象となる大掛かりなものでしたね。

マイナス改定の影響は?

巷ではこの改定が原因で倒産事業所が増加したと騒いでいますが、実際にそうなんでしょうか?マイナス改定が事業所を倒産させるほど収益悪化に直結したとは僕には考えられませんが…。

 

数字がわかりやすい訪問入浴で計算してみましょう。改定前1250単位、月150件とした場合、月の売り上げは1,875,000円となります。一方改定後1234単位では月の売り上げが1,851,000円。その差額は24,000円となります。

 

24,000円/月です。

 

これを見て「1ヶ月で24,000円も減るなら1年で30万近いマイナスじゃないか!」と考える人は早々に撤退をお勧めします。逆に言えば1ヶ月あたり2件増やせばいいだけですよ?人数にしたら新規0.5人です。なぜその努力をせず文句だけ言うのか。

 

もちろんこれは事業によっても違いはあります。あくまでも平均で2.27%引き下げというものなので、極端に言うと0.5%の引き下げがあれば3.5%の引き下げもあるという事。もう一つ、報酬の増減というのは定員のあるサービスに特に響きます。訪問系には基本的に定員という概念がありませんので、先ほどのように(報酬が)減ったら(利用者さんを)増やせばいいという考え方ができるんです。

でも実際に倒産してるんだよね?

しています。2016年調査では108件が倒産したとの事です。2015年は76件、その前は2年連続で50件強となっています。単純に改定時期と倒産増加時期を照らし合わせると介護報酬減により倒産が増加したと言いたくなる気持ちはわかるのですが、介護報酬減額は直接の原因ではなく後押しに過ぎないのではないでしょうか。

 

僕は先ほど報酬の増減というのは定員のあるサービスに特に響くと言いましたが、事業別で見ると訪問介護事業が48件と最多なのです。次が通所・短期入所の38件、有料が11件となっております。なぜ定員概念のほとんどない訪問介護がこれほど倒産するのか不思議ですよね?でもちゃんと理由があるんです、そしてそれは通所や有料にも同じ事が言えるんですね。

必読!倒産数トップ3の共通点

先ほどの訪問介護、通所・短期入所(ほぼ通所)、有料の共通点とは何でしょう?これを理解する事で介護事業所倒産が介護報酬減だけではない事が見えてくると思います。

介護事業所倒産の記事は以前に上げましたが、今回はもう少し絞ってお届けします。

開業のしやすさ

まずはこれ、開業がしやすいという点です。もともと他の介護事業所を運営している会社はもちろん、他業種の参入や個人開業がしやすいんです。訪問介護は目に見える初期投資が少額(本当は落とし穴)ですし、デイは小規模であれば民家を使用する事もできます。有料は完全個人では厳しいですが、初期投資をクリアできる法人であれば特段問題はありません。また、詳しくは後述しますが3つともフランチャイズという手段があります。

 

開業がしやすいという事は裏を返せば誰でも参入できるという事になります。ライバルが多いんですが、こと開業となると盲目的になってしまうのでしょう。きっと大丈夫程度の心持ちでスタートしてしまうんですが、これが大きな間違いとなります。

 

そうです、あまりにも開業のハードルが低いため、それに比例してノウハウの無い素人の開業が多くなるんですね。

 

経営戦略が甘い

大企業っぽい言葉ですね。でもこれどんなに小さい会社にも必要だと思います。皆さんは昔マネーの虎という番組があった事をご存知でしょうか?独立・開業を希望する人たちが投資家(主に当時有名だった企業の社長)に投資・融資を依頼。その希望者と投資家のやりとりは非常に個性的で人間味があり面白い番組でした。ちなみに僕の尊敬する南原竜樹社長(LUFTホールディングス代表取締役)も、現社の前身であるオートトレーディングルフトジャパン代表取締役時代に出演されております。しくじり先生の南原社長出演回を見逃した事は僕の人生最大の汚点であります。

 

ちがう、脱線するところだった。

この番組で独立・開業目指す希望者が提出を求められていたのが事業計画書ですよね。事業計画書とは介護事業所でも開設時に提出し、その後も毎年(度)作成が必要なものですが全く別物です。名前は同じですが僕が言っている事業計画書とはそんな数字だけ並べただけのようなお粗末な物とは違います。

 

例えば今期、うちの事業所が昨対利益100%だったとしましょう。昨対100%というのは今期の計画達成ができなかったという事。単純な算数で考えた時に、来期も今期と同じコストで同じようなサービスしか提供できないと考えます、これは大変。次期はどうやっていくべきか。新規の必要数はどの程度か、報酬改定や法改正の動きはどうか、動きがあるならばそれも盛り込まないといけない。周辺事業所の動向はどうなっているか、実施区域の介護報酬実績の推移はどうか、そのソースは出ているか。提供数増に伴った人員確保、またその人件費はどうか。どの程度のペースで何を増やしていくのか、いつまでに何を達成するのか。

 

うちのような小さな事業所でもこの程度は最低限です。というかこれ普段から考えていなければいけませんよね。それを事業計画書にまとめるといったイメージです。

倒産する事業所はこれができていません。

ニーズはあるんだからしばらく運営していけば自然に利用者さんがくるだろう、といったミルキードリンクよりも激甘な考えがどこかにあるんです。

フランチャイズでの開業

これ一番ダメです。他業種は別として、介護事業所に関してはフランチャイズ開業を選ぶメリットが僕には一つも見えません。

 

・素人考えのスタート

まず、フランチャイズ開業をするという事はほぼほぼ素人という事です。では問います。

そんなズブズブの素人さんが介護で稼げると思ったのは何故ですか?

大企業でもなかなか参入しない業界でどうして素人が稼げると思うのか、僕はこれに並々ならぬ興味があるんです。ただ楽に稼げると思ったんですかね?まさかこれから介護人口が増加するからなんていう雑な理由ではないですよね?ぜひ経験者の声を聞かせて欲しいところです。

・改善されない知識不足

これら介護事業所の指定というのは性格的に許可制ではなく登録制と思ってください。何が言いたいかというと、

指定申請なんて簡単なもんなんです。

ネット時代ですよ、様式だけでなく記載例だってあります。例でわからなければGoogle先生が教えてくれます。僕はGoogle先生と二人三脚で申請しましたよ。そんな簡単な申請すらできない、できるかもしれないけど介護保険法に詳しくないから不安、そんなところでしょう。しかしながらこの申請すらクリアできないようでは、どうせ事業開始後も介護保険法の勉強なんてしませんよね。知識不足を理由にフランチャイズを選ぶ人はいつまで経っても知識不足という事です。

・マネーマジック!

フランチャイズというのはもちろんタダで面倒を見てくれるわけではありません。どっかの比較サイト曰く、まず開業資金として212万~450万必要になります。結構開きがありますね。開業後もロイヤリティがあり、こちらは5%固定、10万固定、6%~など様々です。「~」ってちょっと怖いですよね(笑)僕はそっちの中の人との交流が全く無いため、この部分は確実な情報を持っていません。しかしこれ、恐ろしいシステムですよね。

 

コンビニなんかと違い、介護フランチャイズ売上総利益ではなく売上に対してかかるようです。数字(%)を小さく見せたいだけな気がしなくもないですが。これを前半の訪問入浴で算出してみましょう。訪問介護?めんどくさい!ロイヤリティは一番低い5%とします。念のため言っておきますが、別にうちの事業所の数字を使うわけではありませんからね。うちはもっと稼いでます細々とやってますので。

 

1,851,000円×5%=92,550円

わかりやすく損益分岐点を100万とします。訪問入浴は損益分岐点を超えると利益変動が割と多いので一概には言えませんが、おおよそ売上の4割を利益と考えると

(1,851,000円-1,000,000円)×40%=340,400円

 

利益340,400円に対し92,550円、実に27.1%ものロイヤリティを吸われる計算になります。年間111万ほどです、こんなムダ金払うくらいならボーナスを増やしなさいよ!と叫びたくなりますね。これがマネーの現実です。今回は訪問入浴の数字を使って当てはめましたがデイサービスなんかもっと売上上がるから元になる金額が上がり、そのうえ利益率は下がるもんだから対利益で見た時のロイヤリティの割合はコンビニに匹敵すると思いますよ。デイのお金は触れたことがないからわかりませんが。

 

不適切な独立理由

これはほぼ訪問介護事業所のみでしょう。昨今の日本にはこんなにあるものかと思うほどの訪問介護事業所があり、求人の出ていない事業所は存在しないのではないかというほど慢性的に人が足りない状況です。普通の人なら開業しませんよね?開業前からす〇家状態になるのは目に見えてます。でもね、訪問介護事業所の独立というのは後を絶ちません。普通の人は開業しないんですよ?つまり普通じゃない人ちょっと変わった人が開業しているケースが散見されるという事です。

 

勤務先、もしくは経営している訪問介護事業所で「サ責」の求人を出した経験はおありでしょうか?その時どんな求職者がいましたか?こんな田舎でも割と数名来てくれるんですが…サ責求人の応募者は難あり率が半端ではないです。

一番多いのがサ責経験なし。次にこれまでの主な退職理由が人間関係ばかり。それから会社が評価をしてくれない所だったとかそんな感じの返答が並んで行きます。で、こういった答えをよこす人に僕は必ず次の質問をします。

 

あなたの介護観を教えてください。

 

まあ出るわ出るわ面接のハウツー本にだって書いてないような究極の介護理想像みたいな重たい演説、なぜそれを前職でやらなかったのか。よっぽど人間性が素晴らしそうな人でなければ、このギレン総帥もビックリな演説が出た瞬間に不採用が確定するわけですが。

 

介護業界というのはこのような本人のなかでは自立しているつもり、第三者目線からは自意識過剰とも取れる人が育ちやすいんですよ。そのへんの考察は別記事に譲るとして、実はこういったタイプの人が訪問介護事業所を立ち上げるケースが非常に多いんです。自分はこうしたい、でも雇われは自由にできない、なら独立しようといった感覚。いくら転職や独立を推奨している僕でもこのような動機のみでの開設はお勧めしません。失敗するのが目に見えているからです、ゆくゆくは利用者さんや担当ケアマネに迷惑をかける結果になりますから。

 

本題の0.5%改定

えっと…そうでしたね報酬改定の話でした、忘れてましたすいません。

 

0.5%の報酬改定による介護事業所の変化というのはほとんどありません。これまで書き連ねてきたように、倒産する事業所は報酬改定とは別のもっと大きな要因で倒産しているに過ぎないのです。逆に言うと多少増えても倒産しそうな事業所が息を吹き返す要因にはなり得ないでしょう。確かに規模が大きくなればなるほど0.5%の重みは顕著です。しかしながらそれが理由で事業所が急に好景気になる事はなく、ましてや介護職員への還元に繋がるほどのものでもありませんよね。しかもデイだけ減算とかあり得るので気は抜けませんよ(笑)

 

結局のところは企業努力であり、介護事業所における企業努力とは他ならぬ僕たち介護人の提供するサービスに他なりません。やれ経営だ営業だと騒ぎ立てる僕ですが、それはサービスをしっかり提供しているという大前提があってこそ。介護報酬に左右されない強い事業所を作るには、圧倒的な外部評価を得るのが正攻法です。

 

高価な機械を導入するのも満足度が向上するならいい事です、備品を新しくするのもサービスの一環です。ですが、それだけでは衰退します。利用者さんが最も喜んでくれるのはそれらではない。結局は僕たちが質の高いサービスを提供する事こそ即効性があり、費用対効果も最高であり、なにより大きな広告塔となってこの先の利用者さんに繋がるのではないでしょうか。

 

そのためにはあなたがダメ上司を蹴落とせるだけの評価を得るのが最良ですよ(笑)

脱線記事のウエイトに定評のある介護の中の人でした。